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社長のコラム「ホント伝わらないんだよね!」

2019.4.17

家づくりは、クライアントの要望を聞き、間取りを作ることから始まります。
僕たち作り手がクライアントの要望を聞き取って、図面に落とし込み、カタチにしていきます。

でも現実は、クライアントが「こうしたい」と熱心に伝えても、本気で聞いてもらえないケースが多いのだとか。
他の住宅会社で相談したことのあるお客様が「細かい要望なんて、どうせ伝わらないよね」と思っている事実を知り、僕はたいへん驚きました。

クライアントの要望とは、例えば、

「パントリーが欲しい」
「水まわりはキッチンの近くが良い」
「納戸が欲しい」

などなど。

このような表面的な要望は、設計する側がクライアントの意見を100%取り入れるのが当たり前だと思っています。
でも残念なことに、手間や時間を惜しんでなのか、クライアントの要望を無視して作る業者も少なくないのが現状のよう。

「自分の家を建てるのに、まともに要望を聞いてもらえない。」

これはクライアントにとって大きなストレスですよね。

今回の記事は、家づくりの現場でよく耳にする意思が伝わらないストレスについて、そこから家庭内ストレスの問題にも話を膨らませつつ、僕なりの考えを書いていきたいと思います。

クライアントの要望からわかること

先ほど挙げた例を一つ取って、さらに掘り下げていきます。

「水まわりはキッチンの近くが良い」

この要望から、クライアントの気持ちを深く読み解いていきましょう。

僕の場合、

「家事のストレスを軽減したいんだな」
「共働きだから効率良く家事を行いたいんだな」

と、まず表面的なところから考えます。そして、

「これまで使いづらい家事導線で苦労してきたんだな」
「ご主人はあまり協力してくれないのかな?」
「家事の時間を短縮することで家族でくつろげる時間を増やしたいんだな」

と家庭の事情まで想像します。

さらに、

「家事の価値って何だろう?」
「家事はボランティアなのか・・・?」

という風に、僕の頭の中は哲学的なことでいっぱいになります。

クライアントの表面的な要望を聞くだけでも、これだけ多くの悩み・不満が推測できますよね。これらの悩み・不満の根源は、おおよそ「家庭内ストレス」だと言えるでしょう。

家庭内ストレスの原因は?

かつては地域コミュニティが盛んだったので、親や近所の人とも密に繋がりがありました。
子育て中の母親に対する支援や、「がんばってるね、良くやってるね」など励ましの声があふれていたかと思います。

でも現代はどうでしょうか。
親と別居し、夫婦と子供だけの核家族世帯が一般的です。
夫は仕事から帰ってきても、妻の話(多くは今日あったことや子供のこと)を真剣に聞かず、

「あー、ふーん。で?何が言いたいの?要するにこういうこと?」

とそっけなく返すだけ。

妻からすれば、毎日子供の悩みで爆発寸前なのに、夫に話しても「ホント伝わらないんだよね!」というダブルのストレス。
さらに深堀すると、女性にっとって家事や子育て自体が不満ではなく、それが夫に伝わっていないこと、一人で責任を抱えている感がストレスなのかなと思ったりします。

これはあくまで仮説ですが。

僕だって、とりとめのない妻の話を延々聞かされて、「・・・」と思う気持ちは解らなくはありません。(ここだけの話です。)

また男性がつい言ってしまう「で?何が言いたいの?要するにこういうこと?」の返しは決して悪気があってではなく、男性脳の「条件反射のようなもの」という事情も理解できます。
おそらくこれは、男女のコミュニケーションの特性が異なることで生じる問題でしょう。

でも夫婦円満・家庭の平和を望むなら、やはり相手にストレスを感じさせないための「気遣い」が大切ですよね。

ストレスを和らげる方法は?

最近僕は(自分へ忠告する意味も含めて)クライアントによくこんな話をします。

「夫たるもの、まず家に帰ってすべきことは、妻の話をしっかり聞くこと。それと、首を上下に大きく振って相づちをすると良いですよ。」

とね。

妻の話が万が一、退屈に聞こえても、

「要するに」
「何が言いたいの?」

は決して言わない。
僕も毎日、気を付けているつもりです。

家庭内だけでなく、何かとストレスフルな現代社会。
家づくりでストレスを生まないように、僕たち作る側がきちんとクライアントの話に耳を傾けなければいけませんね。
みなさん大人だから口に出さないだけで、「ホント伝わらないんだよね!」って思ってるはずですよ。

最後に、設計者の立場からもう一つ。
ストレスは、クリエイティヴィティの最大の敵です。

家づくりでクライアントにクリエイティヴィティを発揮してもらうためにも、ストレスの緩和はとても意味のあることだと思います。
結果的にとても良い家ができると信じています。