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男前インテリアとカルチャー

2019.4.23

男前インテリアの起源は、1970年代ニューヨーク。
かつて倉庫街だったニューヨークのソーホーに芸術家が集まり、新たなカルチャーが生み出された。
当時のニューヨークは、大不況で治安も悪く、街全体が混沌とした雰囲気だった。

それまでニューヨークに住んでいた中産階級の人々は郊外に流れ出て、代わりに若いアーティストたちが家賃の安さに惹かれ集まった。
お金のためではなく、純真な心で何かを表現したいと考える彼らが新しいコミュニティを形成し、互いに刺激しあえる環境を作り出していった。

有名なところでは、バスキア、アンディウォーホル、ルーリードなど。
ちなみに当時ディスコに行くお金の無い若者が公園に集まり、レコードプレイヤーを回し始めて生まれたカルチャーが、かのヒップホップである。

そんな時代背景からアートが生み出され、いわば男前的カルチャーが根付いた街がニューヨークのソーホーだった。

しかし80年代に入ると、ジェントリフィケーションという名の不動産開発により、中産階級の人々がニューヨークへ戻ってきた。
次第にカオスな魅力は失われ、高級ブランドが建ち並ぶ現在のニューヨークへと変わってしまったのだ。

男前インテリアの魅力とは

男前インテリアの一番の魅力は、飾らないカッコよさだと思う。
あくまでも自然体に、エイジングの味わい深さを楽しむ。

メインカラーはダークブラウンやブラック。
アイアンやレンガなど、無骨(武骨)な素材使いが象徴的だ。

しかし誤解を恐れずに言うと、当時ニューヨークでその日暮らしをしていた若者たちの生きざまや背景が伴ってこそ、男前インテリアのカッコよさは成立するのではないか…?

ただブームに乗っかっているだけの表面的な男前インテリアには、その重み・深みが感じられない。
そもそも豊かすぎる現代日本の生活環境と荒々しい男前インテリアカルチャーとは、相いれない部分が多すぎる。

とはいえ画一的になりがちな日本のインテリアに、男前テイストをスパイスとして投入する楽しみ方には賛成だ。
どうにもマンネリを感じる部屋には、大胆な男前インテリア取り入れてみることで、保守的に鈍った感性を刺激してくれるかもしれない。

ミニマリスト的インテリアと断捨離文化

流行するインテリアとカルチャーの関係は、家づくりの観点からも非常に興味深いものだと思う。

そこで男前インテリアともう一つ、日本で流行中のミニマリスト的インテリアについて少し触れたい。

ミニマリストと呼ばれる彼ら(彼女ら)は、身の回りの断捨離をし、余計なものは持たない。
そんなミニマリストたちが暮らす部屋のインテリアは、素っ気ないほどシンプルだ。

「飾らない」という意味では男前インテリアと共通する部分もあるが、ミニマリスト的インテリアはそこからさらに無駄を削ぎ落していく。
無骨さではく、むしろ「無」に近ければ近いほど良いらしい。

もはやインテリアと呼べるかは疑問だが、若い世代を中心に浸透しつつある断捨離文化と互助している環境、男前インテリアブームより禅的な精神を有する点において、ミニマリストの方が日本に根付きやすいのかもしれない。