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素材選びで考えること

2019.4.23

住宅をつくる上で、素材選びはとても大切です。
『詳細図ってなに…?僕が世界観にこだわる理由』の記事でも触れましたが、使う素材によって、家の世界観が大きく変わってきます。

素材の持つ存在感、特徴を活かして、どのような空気感を演出するか。
これは設計におけるもっとも大きな悩みごとであり、同時に設計者に与えられた楽しみでもあります。

つい先日ご契約いただいた土浦市のリノベーション工事を例に、設計時の素材選びのプロセスについてお話ししたいと思います。

個性的な無垢の床材「サペリ」

リノベーションする建物は、クライアントのおばあさまが所有されている、築30年の和風づくりの家。
クライアントの希望は、以下のようなものでした。

  1. インダストリアルデザイン
  2. キッチンはモルタル製
  3. 扉は無垢の造作扉
  4. キリムラグのような伝統工芸品や古家具が好み

控えめに言って、個性の強い素材ばかり。
僕はさんざん悩んだあげく、赤褐色が美しいマルホン社の「サペリ」という床を選びました。
無垢の床材といっても、標準仕様の中から選べば種類が限られているのでラクチンです。

でも世界中の無垢を視野に入れると、おそらく何百という種類があります。

クライアントが希望された個性の強い素材に負けないものは?
節はあった方がバランスが良いかもしくは無節が良いか
荒々しい雰囲気、上品な雰囲気はどちらがいい?
固さや経年による変化も考慮して
幅や長さはどのくらいが良いか?
コストは合うだろうか?
クライアントの好みに合うだろうか?

素材の選択肢が多ければ多いほど、その中からひとつを選ぶのに苦労します。
でも苦労するからこそ楽しいとも言えます。
どんぴしゃりなひとつが見つかったときは、本当にうれしいものです。

テクノロジーを駆使したデザイン家電で有名な「BALMUDA(バルミューダ)」の社長の言葉を借りると、

「楽しさはつらさとセット、楽(ラク)はつまらなさとセット」

まったくその通りです。

産みの苦しみがないラクな仕事は、僕たちがつまらない。
だから我が社では、標準仕様の家をつくらないのだと実感しました。

光を活かす素材「ワーロン障子」

部屋の中に自然光を取り入れることで、家はぐんと魅力的に輝きます。
ただ、たくさん窓を作ればいいというものでもなく、建物の周辺環境を考慮しなくてはいけません。

今回の建物は南道路の敷地で建物が道路近くに建っているため、当時の設計者がプライバシーを意識してか、南側に床の間が設けられていました。
結果、南側からの光が全く入らず、東側に作られた縁側からの弱い光に頼らざるを得ないのです。

この悩みを解決すべく、今回のリノベーションでは東側にあった縁側を南側に移動させ、日当たりの良さを活かして室内洗濯物干しスペースとして利用しました。
南向きに大きく取った窓(高さ2400ミリ)からは、十分な光を取り入れることができます。

でも残念なことに、窓から見えるのは生活感溢れる道路の景観であり、さらにLDKからは室内物干しスペースも丸見えです。
そこで室内物干しスペースとLDKの間仕切りに、耐久性のある「ワーロン障子」を使いました。

これならさりげなく目隠しをしながら、風合いのあるやわらかな光を楽しめます。

設計者として譲れないもの

主張の強い素材同士をうまくまとめたり、建物のマイナス要素をプラスに変えたり。
家づくりの回数を重ねるたび、設計は間取りだけではなく、素材選びが重要だとつくづく感じます。