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世の中の8割が失敗すると言われている共同経営の話し

2024.3.9

 
『AS IT IS』の弓削です。

先日、菅原とワインバーに飲みに行ったのですが、マスターと話す中で共同経営について色々と振り返る機会がありました。

マスターも交えて菅原と話しながら、共同経営のミソのようなものが見えてきたので、それを書き残しておこうと思います。

ワインバーのマスターも複数人で開業する話があったそうなのですが、途中で分離していったらしく、共同経営の難しさを痛感したそうです。確かに、一般的にも共同経営は難しいと言われていて、私自身「共同経営は上手くいかないよ」と言われたことが何度もありました。

それでも、こうして7年間、菅原とは大きなケンカもなく上手くやってきています。むしろ二人で共同経営することで、会社の成長の幅を広げ、大きく飛躍できているようにすら思っています。一人では成し得ないことが、二人ならばできる、といったところでしょうか。

なぜ共同経営が上手くいっているのか、二人の力を合わせることで何が起きるのか、といったことを深掘りしていこうと思います。

これを語る上で、まず私と菅原の出会いから共同経営までのストーリーを少しだけ振り返らせてください。

 

【不思議な縁が引き寄せた二人】

私が設計事務所で、菅原が工務店の現場監督として、それぞれの立場で同じ住宅のプロジェクトを担当したことが出会いのきっかけでした。住宅完成後に、施主様と完成パーティーを開き、そこに菅原も招いて一緒に飲んだのが、おそらく初めて酒を酌み交わした思い出です。

その後、前職のハウスメーカーで再会し、同じ設計者という立場で同僚になりました。
不思議な縁で同僚となってからは、よく話をするようになり、飲みにも行きました。

当時の私は、ハウスメーカーに勤務しながら自分の理想とする家づくりやものづくりを実現することの難しさを痛感しており、独立を考えていました。そんな折、菅原も独立を考えているということで、二人で始めてみようという話で共同経営の一歩を踏み出しました。

開業当時は当然顧客もいない中、銀行に融資を断られながらも、どうにかお金を貸してくれる銀行を見つけ、会社を存続させられることになりました。そして、その頃まだ始めたばかりだったインスタグラムを見たという新規のお客様から問い合わせが入り、この出会いが『AS IT IS』の在り方の礎となりました。

このお客様は、いくつものハウスメーカーを回られた末に当社に辿り着きました。何が正解か分からない、自分達の求めているものが何か、会社によって言うことが違うので困惑する、と仰るその目には疲労の色が滲んでいました。お金が無く厳しい状況下でしたが、そんなお客様を目の前に、今自分たちが持っている最大限の力で役に立とうと強く思い、真摯に向き合うこととしました。

それが8年前の出来事で、どんなときも顧客の悩みと真剣に向き合い、徹底して考え抜き、寄り添うことで価値を生み出せるという自信や信念につながっています。

このような苦境も、菅原と二人だったからこそ、乗り越えられたように思います。

 

【共同経営が上手くいく秘訣】

初めて出会ったときから、不思議と波長が合うというか、感覚が似ているというか、そんな気はしていましたが、ワインバーで話し込むうちに、私たち二人の共通点が見えてきました。

それは、「二人が大切にしていること」です。

私たちそれぞれが大切にしていることが共通しており、それがそのまま会社の理念となり、お客様やスタッフとの向き合い方に繋がっていることから、共同経営が上手くいっているのでは、と考えました。

夫婦はお互いに向き合うのではなく、同じ方向を向くことが大事、と聞いたことがあります。
共同経営も、そんな感覚に近しいのかな、と思います。

この考え方は、人生や仕事、そして人間関係においてもとても重要なことだと改めて認識したので、ぜひ本記事で皆さんにも共有させてください。

 

【リスペクトとフラットな視点】

まず、私たちが大切にしているのは「リスペクト」と「フラットな視点」です。この2つは両立性があり、「リスペクトがあるからフラットな視点をもてる」とも言えますし、「フラットな視点をもっているからリスペクトできる」とも言えます。

経営者の中には権力欲や支配欲が強い人もいますが、私にも菅原にもそういった欲は無く、人を自らの支配下に置きたいとは微塵も考えたことがありません。

スタッフや従業員を使うという考え方ではなく、彼らが自律的に動き判断することを望んでいます。逆に言うと「指示が無ければ動けない人」は採用せず、自発的かつ自律的に動ける人を見極めて採用しています。

『AS IT IS』はあくまで器であり、そこで働く人が主役となり、生き生きと働いてほしいと望んでいます。そのため、スタッフたちの仕事に干渉することはありません。だからこそ、スタッフの働きをお客様にお褒めいただくと、私と菅原が大切にしていることが実現できていると実感し、嬉しく思います。

スタッフが個々で活躍するためには、リスペクトとフラットな視点が欠かせません。偏見や誤解を持たぬようコミュニケーションを大切にし、その人の本質を見抜くことで、リスペクトに値する人物か見極め、敬意をもって接するよう心掛けています。

これは、スタッフだけでなく、お客様に対しても同じです。

施主様の希望を伺う際にも、スタッフの話を聞く際にも、一次情報の扱いには注意を図り、誤った認識のないよう徹底しています。

フラットな視点で人や物事を正しく認識できるよう心掛けた上で、他者を尊重しリスペクトすること。これが私と菅原の中に一貫してある価値観です。

もちろん、私も菅原も互いにリスペクトしあっています。

私たちが互いにリスペクトしあっているのは、それぞれがものづくりに真摯に向き合っている姿を見せていること、普段はふざけていても問題や困難があると真摯に向き合うこと、困難を乗り越えようとする気概があること、など、尊敬できる点が共通しているようです。

これも話していて見えてきたことでした。

あとは、互いの得意分野が異なるというのもリスペクトの大きなポイントになっているのかな、という話も出ました。

私には私の得意分野があり、菅原には菅原の得意分野があり、自分には到底及ばないスキルをもち、高いクオリティのものを生み出して成果を上げている点も、リスペクトポイントとなっています。

お山の大将や天狗にならずに、全ての人をフラットに見極め、リスペクトできる人と共に歩んでいくこと、それが私と菅原が共に大切にしていることです。

 

【同じ釜の飯を食べる】

少し話が逸れますが、先日「ポトフ」というフランス映画を観ました。

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ポトフはフランスの伝統的かつ日常的な家庭料理ですが、映画の中では上流階級向けに芸術の域に高めたポトフを提供するというシーンが出てきました。

すでに日常の中にあるものを、美しく芸術の域に到達させることができるという発見があり、同時に「工務店も、施主様の生活やライフスタイルなどの日常を扱う仕事だし、共通する部分があるな」とも思いました。日常的なものを芸術の域まで高めるというのは、目指していきたいところです。

ポトフが食べたくなるような映画でしたが、私と菅原は美味しいものと酒には目が無く、しょっちゅう一緒に飲みに出かけます。会社(カンパニー)の語源由来はラテン語の「com(共に)」と「panis(パンを食べる)」に仲間を表す「-y」がついたもので、「一緒にパンを食べる仲間」という意味になります。日本語にすれば「同じ釜の飯を食べる」といったところでしょうか。

私と菅原は何度も同じ釜の飯を食べ、杯を交わしてきました。

最初は冗談ばかりで軽口を叩きながら美味しい食事と酒に舌鼓を打っているのですが、しばらくすると決まって会社や事業、経営の話になります。目下の課題や、その解決方法、会社の成長について、そして、ものづくりについて、気付けば熱く語り合っています。

私と菅原は、美味しいものと酒の他に、なによりも「ものづくりが好き」という大きな共通の「好き」をもっています。二人ともモノへの愛や、職人などの作り手への尊敬が強く、ものづくりに宿る物語や至高の技術に心動かされます。

こういった「同じもので感動できる」や「同じものに熱中できる」という点が共通しているのも、円満な共同経営や人間関係の秘訣なのかもしれません。

私たち二人には、美味しい食事、美味しい酒、そして、ものづくりがあれば、これから何年でも一緒にやっていける、そんな確信があります。

7年も共同経営してきて、大きなケンカはしてこなかったと思うのですが、振り返れば勿論多少のぶつかり合いや意見の違いはあったはずなのです。ただ、どうにも互いにしっくりきていない、なんだか納得感がない、というときには決まって酒を飲みに行き、腹を割ってトコトン話し合ってきました。肴も酒も無い中でかしこまって話し合うよりも、「同じ釜の飯」をつつきながら話す方が、互いの本音を伝えられるというのは不思議なものです。やはり「カンパニー」とは、そういうものなのかな、とつくづく実感します。

 

【飽きっぽさが引き出す飽くなき挑戦欲】

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私と菅原に共通している性格というか、性質があります。それは「飽きっぽい」ということです。

二人とも飽きっぽく、同じことの繰り返しや、変化のない物事を続けることに耐えられません。そういう意味で、その飽きっぽい二人が長年続けてこれた建築の世界、そしてものづくりの世界は相当に面白いのだと思います。

言葉遊びになってしまいますが「飽きない=あきない=商い」ということで、飽きずに持続させることが起業の存在意義なのかな、と考えることがあります。

マンネリやルーティーン化を好まないため、設計の標準仕様は作らずに、常に「生み出す」ことにこだわり続けています。お客様が一人ひとり違うため、そのお一人お一人に寄り添い、声を聞き、希望を取り入れ、全力で作っていく、その過程は「飽き」とは無縁です。やっている当の本人も楽しく、前のめりになって向き合いたいと思えるくらいワクワクする仕事です。結果として、それがお客様の満足度を高めることに繋がれば幸いですし、そこが『AS IT IS』の強みでもあると自負しています。

飽きっぽい二人組は、常に何か新しいものや刺激を探しています。

独立して共同経営を始めたことも、そのひとつです。

『AS IT IS』を立ち上げ、飛び込み営業し、SNSも始め、ツリーハウスを作り、好きな建築家に会いに行き……と、とにかく好奇心のままに「面白そう」「やってみたい」と思ったものには何でも挑戦しています。

片方が慎重派だったり、保守的だったりしたら、この挑戦は叶わなかったでしょう。二人揃って飽きっぽく好奇心旺盛で「やってみたがり」だからこそ、爆発的な行動力が生まれていると思っています。

その先に正解や答えがあるかどうかは一切考えずに、ただただ純真無垢な好奇心に従い、暗闇だろうと迷路だろうと、どこへでも飛び込んでいきます。その中で光明を見つけたら、儲けものです。その光を全力で掴みにいき、道を切り拓いていくだけです。

昨今、コスパやタイパといった言葉が当たり前のように使われ、人々は効率重視となり、遠回りせずに最短ルートで進みたがります。

でも、そんな現代だからこそ、その中で生き抜いていくには模索や試行錯誤、挑戦といった「遠回り」が必要なのではないでしょうか。コスパやタイパに踊らされず、純粋な好奇心や興味のままに進んでみると、その道でしか見られない景色が見られるかもしれません。

 

【夢と浪漫に生きる】

現在、私は42歳、菅原は39歳になりました。出会って16年、お互い歳を取りました。
でも、大人になったからといって現実しか見ないようにはなりたくないと思っています。

私たちは二人とも、意図的に夢と浪漫を思い描いています。

今の二人の夢は、会社をもっと成長させ、3~5年以内に工房(ラボ)を作ることです。そこでは大工さんが常に実物大のスケールで現場の納まりの実験をしたり、部分的な空間を作って光の入り方を検証したりできて、意のまま、思いのままに「描いたものをカタチにする」ことができます。そんな工房を作ることで、ものづくりをより身近なものにしたいと考えています。

こんな大きな夢を語って、恥ずかしくないのかと言われてしまいそうですが、考えてみるだけでワクワクが止まらない素敵な夢だと、私たちは胸を張ってこの夢を語れます。夢と浪漫を思い描くことはワクワクすることであると同時に、生きる希望を持つこと、そして未来を作ることです。

経営者は未来を描き、作る存在であると、私たちは考えます。

ペンとノートを持ち、白紙に青写真(ヴィジョン)を思い描き、その描いた未来に二人が共感することで、行動に繋がり実現性が増し、描いた未来が現実の中に形作られていいきます。

それができるのが経営者の魅力であり、使命でもあると思います。

自分で描いた物語の中で、演者の一人として夢と浪漫の中を生きていく充実感の中で、その夢と浪漫を共に語れるかけがえのない相棒が常に隣を走っている―

こんなに幸せなことがあるでしょうか。

夢を描くこと、浪漫を語ることをやめない限り、未来はどこまでも広がっていきます。

少子高齢化社会、増税に次ぐ増税、政治家の裏金問題、さまざまな事件、老後の資金問題……など、問題や不安を上げればキリがない、この世知辛い現代社会ではなかなか未来に希望を描けません。だからこそ、楽しく生きていくためにも、夢と浪漫を半強制的に胸に抱き、未来を押し広げていきたいと思っています。

ただキラキラしているだけではなく、実は必死に生きている42歳のオッサンですが、心だけはいつまでも若く純粋であろうと、これからも頑張ってまいります。そしてそれは菅原も同じ、と信じております!これが私たちの共同経営スタイルで、これからも夢と浪漫を追い求め、まだまだ全力疾走していきます。

共同経営が上手くいっていることについて、ワインバーでの会話がきっかけとなって色々考えてみましたが、気付いたことや見えてきたことがたくさんありました。

これから共同経営を考えている人や、今共同経営で悩んでいることがある人などの参考になれば幸いです。何か少しでも役立てていただけることがあれば、とても嬉しいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!